
マーヴィン・ゲイのデュオ・パートナーとしては史上最高ともいえるタミー・テレル。
ただ、彼女がそれだけの人でなかったのは、彼女のファンだったら誰しもが知るところだと思います。
特に近年、彼女のソロのリイシューがぼちぼちとなされていましたが、「Essential Colletion」、マーヴィンとのデュオの集大成「Complete Duets」等に分散されていたものを今度Hip-Oが新たにコンパイルし直し、彼女のアンソロジーとも言えるソロの集大成決定版ともいえるものになっています。
「Essential Collection」の方では、前半に彼女唯一のフル・アルバム「Irresistible」をまるっと収録、
その後に未発表音源を追加(ラストは既出のマーヴィンとの不滅の"Ain't No Mountain High Enough"でしたが・・・)という構成でしたが、今度は2枚組みに拡大されて、1枚目前半はモータウン入社以前のタミー・モンゴメリー時代の音源からスタート。この時代はScepter, Wand, CheckerそしてJames Brown Production を渡り歩いていた頃のシングル盤をフォロー。
1枚目後半はいよいよモータウン入社後の音源になりますが、まずは「Irresistible」からフル収録、
それに「Irresistible」単独CD化されたときのボートラ、シングル曲2曲(ステレオ・ヴァージョン)追加。
此処までがDisc 1になります。
Disc 2は、未発表音源(一部既出ですがミックスが違います)をメインに、最後にスモーキー・ロビンソン&ミラクルズのオープニング・アクトを勤めたときのライヴ音源を収録という構成です。
Disc 1の方からいくと、まずはScepterでのシングル"If You See Bill"。弦を使った如何にもな、
あの時代にありそなアーリー・ソウル調の激甘ソング。ですが、意外に甘味を押さえたタミーのヴォーカルが胃もたれを起させることなく聴かせます。
続くWandになるとバックのノーザンさも加わり若干のモッド感も加わりはじめますし、また"Big John"でのガール・グループ的なノリでのタミーもめっさハマってますね。もし、タミーがガールグループのリードだったとしてもバツグンだったんじゃないかと想像も膨らみます。
そして・・・JBイヤーズのシングル曲"I Cried"と"If You Don't Think"。
これはJBの既出コンピ、「James Brown's Original Funky Divas」にも収録されていましたが、
音質は格段に向上しています。彼女の資質が単なるガール・ポップ・シンガーでない、しっかりしたR&Bフィールを持ったシンガーだったことをこのJB時代から聴き取ることが出来ます。ディープという表現が彼女に適当かどうかはわかりませんが、"I Cried"などを聴くと、少なくともカーラ・トーマスよりはディープさを感じます。この辺りのディープ感は、その後のChecker吹き込みになると更に増してきます。シャウター系を歌っても破綻を見せない彼女の余力みたいなものは、そのポテンシャルを痛感させるところです。
さて次、ここからは、いよいよモータウン・イヤーズ。それまでのタミー・モンゴメリーから心機一転、
タミー・テレルとしてやっていくことになるワケです。資質としてはそれまでも充分にあったにも関わらず、どこもタミーを扱いあぐねていた感がなきにしも在らずなとこだったんですが、モータウンになるとコンポーザーをハーヴィ・フークア&ジョニー・ブリストルのコンビに固定し、プロダクションもそれまでとは比較にならない、しっかりしたものになります。彼女の初(そして唯一)フル・アルバムもこうやって生まれることとなったわけですが、それまでの経験が今まさにモータウンで花開こうかという頃でもあったように思われます。
"Come On and See Me"での例えようもない幸福感は、聴いてるコチラ側をも幸せにしてくれます。
ただ・・・こうやって一度モータウンのファクト・ラインに乗ってしまうと、モータウン以前での原石の輝き的なものもまた、捨て難く思えてきたりするところもあります。。。
Disc 2での未発表音源を聴いていると、何となくモータウンもタミーの扱いに迷走している節も窺えます。
その辺りが結局、マーヴィンとのパッケージングというカタチを取ることになったのかも知れないのかなとも思えてきます。随分後になって作者のスティーヴィー・ワンダーが自身のアルバム「Hotter Than July」で収録した、"All I Do Is Think About you"等はどういう理由でオクラ入りさせられてしまったのかはわかりませんが、出来云々というより(すこぶる出来は良いと思うのですが)モータウンの戦略的な迷いにタミーが巻き込まれたような気がしないでもないですね。。。
最後に収録された、"Roostertail"でのライヴがその辺りのモヤモヤを払拭してくれるような、これがまた素晴らしい出来の録音でして。のっけのスタンダード・ナンバー"Almost Like Being in Love"のタミーの歌いっぷりなんて鳥肌もんです、何かサム・クックの「At The Copa」を思い出したりもします。
彼女のヒット・ナンバーの幾つかも勿論歌ってますが、スタジオでは隠れがちな彼女アーシーさが表出していてこれも素晴らしいですし、ダイナ・ワシントンのオハコ"What a Deffence a day"からの一連のアレサ、ナンシー・ウィルソン等のグレイト・フィーメイルシンガー・メドレー。そしてシュープリームスのカバー"Baby Love"などはダイアナ・ロスとは違ったニュアンスの表現です。
このミラクルズのオープニング・アクトを勤めたRoostertailでのライヴはミラクルズの「Going To A Go-Go'」がCD化された折りにボートラで入ってたあのステージと同じやつなんでしょうか?
あのミラクルズのライヴも堪んなく素晴らしくて、生々しいマーヴ・タープリンのギターが聴けるライヴ・ヴァージョンの"A Folk In The Road"なんて悶絶もんでしたね。
このRoostertailでのライヴって単独でCD化しないんでしょうか?。サイコーなんですけどね。